体育館の床を歩くとき、私たちはその下にある「構造」について考えることはほとんどありません。
しかし、バスケットボールの選手がジャンプして着地しても、子どもたちが全力で走り回っても床が沈まず、足腰に痛みが残らないのはなぜでしょうか。
その答えは、床の下に隠された“見えない技術”にあります。
体育館の床は、ただの木の板ではなく、何層もの部材が綿密に組み合わされた「多層構造」。
衝撃を吸収し、反発をコントロールし、長期間にわたって安全性と快適性を維持するように設計されています。
この記事では、体育館の床構造の仕組みをわかりやすく解説し、構造の違いがプレー感覚や耐久性にどのように影響するのか、そして実際にどのような床が採用されているのかを紹介します。
体育館の床構造は“多層システム”でできている
体育館の床は、複数の層(レイヤー)で構成された多層システムです。
目的は「安全性」「耐久性」「弾力性」「メンテナンス性」を同時に確保すること。
特にスポーツ競技が行われる施設では、プレーヤーの身体にかかる衝撃を和らげるために、床の中にクッション層(緩衝材)が組み込まれています。
代表的なのが置き床式弾性床システム。
コンクリートの上に支持脚・大引・根太・合板・フローリングを重ね、その間にゴムやスポンジのクッション材を挟むことで、衝撃吸収と反発を両立しています。
一見シンプルに見える床も、実は5〜7層ほどの複雑な構造体。
それぞれの部材が異なる役割を担い、協調して“人に優しい床”をつくっています。
体育館床構造の一般的な層構成と役割
| 層の位置 | 部材名 | 主な役割 | 補足説明 |
|---|---|---|---|
| 最上層 | 床材(フローリング・長尺シート) | 表面仕上げ、グリップ性能・見た目を確保 | 競技種目に応じて素材を選定 |
| 中間層 | 構造用合板 | 荷重分散・下地安定 | 床鳴り防止にも効果 |
| クッション層 | ゴム材・スポンジ・フェルト | 衝撃吸収・弾力性確保 | 身体への負担を軽減 |
| 支持層 | 支持脚・大引・根太 | 床全体の水平・強度維持 | 高さ調整や通気確保が可能 |
| 最下層 | コンクリート下地 | 基礎構造として荷重を支える | 防湿・断熱・水平精度が重要 |
下地コンクリート|すべてを支える“静かな基礎”
床構造の最下層にあるのがコンクリート下地。
建物の基礎であり、水平精度と防湿性能が床の寿命を左右します。
施工時にはレーザーレベルを用いてミリ単位で調整し、防湿シートや断熱材を同時に施工します。
これにより床下の湿気や温度変化を抑え、木材の腐食やカビの発生を防止。
特に雪国では結露対策のため、下地精度が非常に重要です。
支持脚・大引・根太|床を浮かせる骨格構造
コンクリートの上に設置されるのが支持脚(アジャスターベース)と、その上に組まれる大引・根太です。
この部分が床構造の骨格となり、水平・強度・弾力のすべてを支えます。
支持脚は鋼製で、高さ調整機構を持ちます。床を浮かせることで配線・通気を確保し、正確な水平を維持。
大引と根太は木材またはスチール製で、荷重を分散させながら床鳴りを防ぎます。
ここがしっかりしていないと、床の沈みやミシミシ音の原因になります。
クッション材|衝撃を吸収する“やさしい層”
体育館の床構造の中で、最も人に影響を与えるのがクッション層。
ゴムやウレタン、フェルトなどの弾性素材を使用し、ジャンプや着地時の衝撃を吸収します。
硬すぎると足腰を痛め、柔らかすぎると競技性が損なわれます。
JIS規格では転倒時の衝撃値が100Gs以下とされており、この基準を満たす弾性が必要です。
たとえばバスケットボールでは、着地時に数百kgの力が瞬時に加わります。
クッション層がなければ、その衝撃が膝や腰に直撃してしまいます。
つまり、この層はプレーヤーの体を守る“安全装置”でもあるのです。
構造用合板|荷重を分散し、床鳴りを防ぐ
クッション層の上に設置される構造用合板は、床全体の荷重を分散する中間層です。
耐水性の高いJAS規格合板が使用され、寸法の安定性にも優れています。
ビスや釘のピッチ(間隔)も施工基準で厳密に決められており、これを守ることで経年劣化や床鳴りを防止。
この層がしっかりしていなければ、表面の高級フローリングも長持ちしません。
床材(仕上げ材)|プレー感覚を決める最上層
最後の仕上げが床材。競技や用途に応じて素材が選ばれます。
| 床材の種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 木製フローリング(メープル材など) | 天然木特有の温もりと反発力。競技性が高い。 | バスケットボール・バレーボールなど |
| 長尺シート(塩ビ製) | メンテナンス性が高く、滑りにくい。コストを抑えやすい。 | 学校・地域体育館 |
メープル材は競技性と美観を兼ね備えた“王道”。一方、長尺シートは多目的利用に適しており、防滑性と耐久性を両立します。
体育館の用途別に異なる床構造
- 多目的体育館:フローリングまたは長尺シートで弾性と防滑性を両立。
- 体操競技場:スプリング入りの特殊床「タンブリングバーン」を採用。
- ウェイトトレーニング施設:厚手のゴムマットや防振構造で衝撃吸収。
用途に応じて床構造を最適化することで、安全性・競技性・長寿命化を実現します。
体育館の床構造が求められる理由と課題
体育館の床は、人を支えるだけでなく人の体を守る装置です。
しかし全国には築30年以上経過した施設も多く、支持脚の腐食やクッション材の劣化が進行。
床鳴り・沈み込み・たわみなどのトラブルが増えています。
長寿命化のためには、5年に1度の点検と、15〜20年ごとの改修(張り替え・再塗装)が推奨されます。
特に鋼製床構造では、サビやボルト緩みの早期発見が重要です。
体育館の床構造は“信頼の積層”
体育館の床構造は、見えない部分にこそ価値があります。
一つひとつの層が力を分担し、長い年月をかけても変わらない安全性と快適性を支えています。
もし「床が沈む」「ギシギシ音がする」「弾力がなくなった」と感じたら、それは構造の劣化サイン。
長野県や周辺地域で体育館床工事を検討しているなら、弾性床システムに精通した専門業者(例:株式会社霜鳥/コートラインプロ)へ相談を。
私たちは、ただ床をつくるのではなく、その上で過ごす人たちの“安全な時間”をつくっています。


















