新築の頃は、シューズが床をしっかりと捉え、踏み出した瞬間にピタッと止まれる感覚があった。
ところが数年経つと、「最近やけに滑る」「ボールのバウンドが重い」「転倒しそうになる」。そんな声が増えていませんか?
体育館の床は、見た目はきれいでも、表面のコンディションが変わるだけで性能は大きく低下します。
その原因は単なる経年劣化ではなく、ウレタン塗膜の摩耗・皮脂やホコリの蓄積・湿気・誤ったメンテナンスによるものがほとんどです。
この記事では、「なぜ新築時より滑りやすくなるのか」「どうすればグリップを取り戻せるのか」を現場目線で詳しく解説します。
体育館の床が滑りやすくなる主な原因
ウレタン塗膜の摩耗でグリップが低下
新築時の体育館の床には、ウレタン塗膜が施されています。
これがシューズの摩擦を適度に保ち、滑りすぎず止まりすぎない理想的な床をつくっています。
しかし長年使用すると、授業や部活動での摩擦で塗膜が削れ、摩擦係数が下がってしまいます。
見た目が変わらなくても、摩擦力が半減しているケースも多く、センターサークルやアタックラインなど使用頻度の高いエリアから劣化が進みます。
汗・皮脂・ホコリの蓄積による摩擦低下
運動中の汗や皮脂、靴底のゴムかす、外からの砂やホコリが混ざり合い、床に薄い膜を形成します。
この“皮膜”が潤滑剤のような働きをして、床とシューズの間の摩擦を奪うのです。
体育館は湿度がこもりやすいため、皮脂や汗が乾きにくく、汚れが定着してしまうことも。
この場合は専用洗剤や滑り止めコンディショナーでの除去が必要です。
不適切なワックス使用による悪循環
「光沢を出したい」と市販のフローリングワックスを塗るのは厳禁です。
これらは光沢重視で摩擦を増やすことを目的としておらず、逆に滑りやすさを助長します。
重ね塗りを繰り返すと、汚れを閉じ込めた厚いワックス層ができ、ヌルヌルした感触に。
文部科学省も体育館へのワックスがけを禁止しており、ノンワックスタイプの清掃剤を使用するのが原則です。
湿気やカビによる表面劣化
梅雨や冬場は床下湿度が上がり、木材が膨張して塗膜に微細な亀裂が生じます。
そこにカビが繁殖すると、床表面に白い曇りが出て滑りやすくなります。
湿った状態は汚れが付きやすく、清掃しても滑りが残ることも。
体育館の床は天然木が多く、「呼吸する素材」です。湿度管理が非常に重要です。
体育館の床を滑りにくく保つための対策
① 日常清掃で汚れをためない
- 練習前後に乾いたモップでホコリや砂を除去
- 週1回は体育館専用洗浄剤で軽清掃
- 出入口にマットを設置して砂の侵入を防止
乾拭きは「摩擦を取り戻す」効果があります。水拭きは木材を膨張させるため避けましょう。
② 専用メンテナンス剤でグリップを回復
| メンテナンス剤名 | 効果 | 使用頻度 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 滑り止めコンディショナー | 汗・皮脂を分解し摩擦を回復 | 月1回 | 均一に塗布する |
| ノンワックス洗浄剤 | 汚れ除去と滑り防止 | 週1回 | 拭き取りを丁寧に |
| フロアリフレッシュ剤 | 塗膜を保護し安定したグリップを維持 | 季節ごと | 多量塗布は逆効果 |
これらを正しく使うことで、床の性能を保ちながら塗膜の寿命を延ばせます。
③ ワックスを使ってしまった場合は剥離作業が必要
過去にワックスを塗布している場合、専門業者による剥離作業が必要です。
自己流で行うと木材を傷める可能性があるため、プロに依頼して安全に除去しましょう。
④ 専門業者による再塗装・研磨
滑りが改善しない場合は、塗膜自体が摩耗している可能性があります。
再塗装(サンディング+ウレタン再塗装)で、新築同様の摩擦力を取り戻せます。
- 既存塗膜の研磨除去
- 下地清掃とウレタン塗装(2〜3回塗り)
- 乾燥・硬化・最終仕上げ
5〜7年に一度の再塗装が理想。
使用頻度が高い施設では、早めの実施で滑り事故を防止できます。
⑤ 湿気管理と換気の徹底
雨天や梅雨時期は湿度50〜60%を目安に保ちましょう。
換気扇や送風機で空気を循環させ、結露やカビを防ぎます。
長期休館時も月数回の換気が効果的です。
滑る床は「劣化のサイン」—早めの対策で安全を守る
体育館の床が滑りやすくなったとき、それは摩耗・汚れ・湿気が進行している証拠です。
放置すれば転倒事故やスポーツ障害、床の腐食にもつながります。
まずは乾拭きと専用剤での清掃を徹底し、改善しない場合は専門業者へ相談を。
再塗装や剥離施工で、本来のグリップ性能と輝きを取り戻せます。
体育館の床は、学校や地域の記憶を支える場所。
その床を守ることは、未来の子どもたちの安全を守ることです。
日々のケアから始めて、もう一度“あの新築時のピタッと止まる床”を取り戻しましょう。


















