冬の朝、体育館の扉を開けた瞬間に広がる木の香り。
ツヤのある床に光が反射し、ボールを打つ音が響く。そんな風景は、誰にとっても懐かしく、安心できる光景ではないでしょうか。
しかし、その「ピカピカの床」が、実は危険をはらんでいることをご存じでしょうか。
2017年、文部科学省は全国の学校や自治体に対して体育館フロアへのワックスがけ・水拭きの禁止を正式に通知しました。
理由は明確です。美観を保とうとするあまり、滑りやすくなった床で生徒が転倒したり、床材が水分で劣化したりする事故が相次いだからです。
体育館の床は、単なる「木の板」ではありません。
競技の安全性・快適性・弾力性を保つために、科学的に設計された“スポーツ専用床”です。
この記事では、そんな体育館フロアを長く安全に保つための正しいメンテナンス方法を、日常管理から再塗装・改修までわかりやすく解説します。
体育館の床にワックスをかけてはいけない3つの理由
1. ワックスが床板を劣化させる
ワックスには水分や溶剤が含まれており、木製フローリングがそれを吸収して膨張・収縮を繰り返します。
これがひび割れや反り、床鳴り、塗膜剥がれの原因になります。
特に寒暖差や湿気のある地域では、ワックスの影響で劣化が早まる傾向があります。
2. 滑りやすくなり事故が増える
体育館床にはもともとウレタン塗膜が施されており、転倒防止のための摩擦係数が調整されています。
その上からワックスを塗ると、塗膜本来の性能が失われ、表面がツルツルになり事故が発生しやすくなります。
実際、ワックス後に滑って転倒した事例が全国で多数報告されています。
3. 水拭きも厳禁な理由
濡れ雑巾での清掃も一見きれいに見えますが、木材は水分を吸収しやすく、膨張・反り返りの原因となります。
乾いても一度変形した床は元に戻らず、ボールの跳ね方や足裏の感覚に影響が出ます。
そのため、文部科学省では「水拭きも禁止」としています。
体育館スポーツフロアの正しいメンテナンス方法
体育館の床は、正しい清掃と定期的なメンテナンスを行えば、20年以上美しさと性能を保てます。
ここでは、日常管理から改修まで段階的に紹介します。
日常清掃|乾式モップと専用クリーナーを活用
- 乾いたモップで清掃:ホコリや砂が摩耗の原因になるため、使用後は乾拭きを徹底。
- 松ヤニ汚れは専用クリーナー:アルコール系洗剤は塗膜を傷めるため、体育館専用クリーナーを使用。
- ラインテープの糊残り対策:溶剤タイプの糊クリーナーでやさしく除去。強く擦ると塗膜を傷めます。
このような日常の小さな配慮が、床を長持ちさせる最大のポイントです。
定期メンテナンス|再塗装(リコート)で性能を回復
経年劣化や摩耗には再塗装(リコート)が有効です。以下の手順で行われます。
- 床面をサンディング(研磨)し、汚れや古い塗膜を除去。
- 素地を整えてウレタン樹脂塗料を複数回塗布。
- 乾燥・硬化後、光沢と摩擦を最適化して仕上げ。
再塗装後の床は新品同様に光沢が戻り、滑り止め性能も安定します。
再塗装の目安時期
一般的には3〜5年ごとが理想。
学校体育館のように使用頻度が高い施設では、摩耗が早いため2〜3年ごとの再塗装を推奨します。
注意点
DIYでの再塗装は危険です。
市販塗料は摩擦係数や弾力が規格外で、滑り事故や塗膜剥がれの原因になります。
必ず体育館専用塗料を扱う専門業者に依頼しましょう。
床材の劣化が進行した場合の改修工事
床の沈み込みや割れ、カビ臭などが発生している場合、下地の損傷が進んでいる可能性があります。
この場合は研磨ではなく床材の張り替え工事が必要です。
- 床が沈む(下地の腐食)
- フローリングの反り・割れ
- 湿気やカビによる黒ずみ
改修工事では、床下の鋼製脚や合板、クッション材まで点検・交換を行い、再び20年以上使える床に再生します。
メンテナンスを怠ると起こるトラブル
| トラブル | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 床鳴り・沈み込み | 下地の緩み・湿気 | 下地補修・張り替え |
| 滑りすぎる | ワックス塗布・汚れ | 再塗装・専用クリーニング |
| 黒ずみ | 松ヤニ・砂・油分の蓄積 | サンディング+再塗装 |
| 塗膜の剥がれ | 経年劣化・摩耗 | 専門業者によるリコート |
体育館フロア維持のポイント4つ
- 乾いたモップでの清掃を習慣化
- 松ヤニや糊の汚れは当日中に除去
- 汚れが落ちない場合は業者へ相談
- 5年ごとに床下を含めた定期点検
体育館フロアのメンテナンスは専門業者に任せるべき理由
体育館の床は「木材」ではなく「スポーツ設備」です。
そのため、摩擦・弾性・滑り係数などを正確に管理する必要があります。
専門業者なら、
- JIS規格に基づく滑りテスト(摩擦係数測定)
- 専用ウレタン塗料の厚み・硬度管理
- 床金具・クッション材まで一括点検
といった総合的なメンテナンスが可能です。
施工後の滑りテストで安全性を数値で保証するのも、専門業者ならではの対応です。
体育館の床を守るのは“清掃”ではなく“理解”
体育館の床を長く安全に使うために最も大切なのは、見た目よりも構造の理解です。
ワックスがけや水拭きを禁止するのは、安全性を最優先するため。
正しい知識と適切なメンテナンスを続ければ、体育館フロアは30年以上輝きを保ちます。
もし光沢が落ちてきた、滑りやすくなった、黒ずみが気になる場合は、迷わず専門業者に相談を。
特に寒冷地・多湿地域の長野県では、結露や温度差による膨張収縮に対応できる地域密着型の専門業者が安心です。
体育館は、子どもたちの成長と地域の安心を支える場所。
その床を守るのは、日々の清掃だけでなく正しい理解とプロの技術です。



















